Jリーグでの「ビッグクラブ」のつくりかた。
Jリーグは世界的にも特異なリーグ
海外はほとんど見ないし知らない人間なのですが、Jリーグはとにかく変わったリーグだと思います。多少の浮き沈みはありますが、海外各国のリーグは勝つクラブ、中段で踏ん張るクラブ、エレベータークラブってのが大雑把に分かれているような気がします。
Jリーグほど優勝チームがころころ変わるリーグも珍しいと思います。それこそ下部リーグから上がったチームが上位リーグでその年に優勝しちゃうとか。なんでそんな状態にあるのか。それは未だJのクラブカラーというものが確立されていないからなのかなと思っています。
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クラブカラーってなに?
「クラブカラー」とは。鹿島ならえんじ色!レイソルは黄色!…ではなく、運営の仕方であったり戦術であったり。クラブのあり方のようなものをカラーとします。そのクラブカラーというものが揺らぐとどういうことになるのかの例を挙げてみます。
Jリーグで失敗するクラブの典型は、良い成績を残した次の年に大型補強をしてしまうクラブ。それによってクラブカラーが揺らぎ、好調だったチームが崩壊してしまい下部へまで転落していくことが多いような気がする。大型補強でないにしてもクラブ内の選手の入れ替わりが激しいとクラブカラーを失い、同じような道を歩んでしまう傾向にあるよう。
世代交代がうまくいかないということもJでビッグクラブができない理由のひとつだと思う。これもクラブカラーということになる。世代交代が常に上手くいっているチームという意味では鹿島アントラーズは結構いい線いっていると思います。成績も常に優勝争いとまではいかないまでも優秀なスカウティングで適度な補強ができているし、監督も一貫してブラジル人。クラブのカラーが最初から全く変わらずにいる珍しいチーム。
監督というのもクラブカラーを左右する大きな存在。例えば大きく分けて欧州、南米スタイルの監督にころころと変えてしまうクラブはカラーが定まらないといっていい。同じ監督を長く使わないにしても、同じスタイルをもつ監督を選ぶことでクラブカラーを保ちさらに濃くしていくことも可能。失敗するとがらっと方針を変えて違うスタイルにしてしまうフロントが多いのもビッグクラブができにくい要因かもしれない。たとえ同じスタイルだとしてもちゃんと質を見極めないと大変なことになる。
クラブカラーというのは積み重ねであり、そのクラブの歴史であるということ。あっちもこっちもと積むよりも、これだというものに地道にひとつずつ積み上げて作られていくものだと私は思います。 そしてクラブカラーのないチームは絶対にビッグクラブにはなり得ないと思います。
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一番「ビッグクラブ」に近いのは
もし今一番ビッグクラブに近いチームは、と問われたら。私は川崎をホームとしたフロンターレを挙げたい。最初は下部リーグだったこともあり、ヴェルディ川崎の影に隠れがちでした。上がったり下がったりもありましたが、それを確実に糧にした。ゆっくりとですが常に上位を争える力を持ち続けられるようになりました。そしてサポーターが徐々に増えスタジアムも改修され、順調に規模やレベルが上がっているクラブ。
注目したいのはホームゲームで常にといっていいほど面白そうなイベントが開催されるところ。地味ながらサポーターだけではなく市民や県民に訴えかけられるイベントを開催できる広報の手腕は無視できない。こういったことも含め川崎がどんどん愛されるクラブへと成長し続けているのだと思っている。このクラブ愛はビッグクラブへと進むために大きな力になる。
だけどそれだけではビッグクラブになれないのが困ったところ。
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よい循環を作るには
ビッグクラブが生まれない最大の理由はやはりお金の問題。海外の主要リーグは放映権という莫大なお金が各クラブに分配される。それは有料のPPVなどに移行できたから。それはリーグやクラブ人気があってこその動きといえる。さらに海外でも放送されることでスポンサーが付くメリットも大きくなることでお金が入ってくる好循環ができている。
かたやJはといえば国内ですらあまりメジャーでないにも関わらず地上波でほとんど放送されておらず、CSのみでの放送(一部は地上波BSで放送あり)。海外での放映権の問題は20年以上経ってやっと動き出したところ。そんなリーグやクラブにスポンサーが付くメリットは少ないと悪循環に陥っている。Jに必要なことは国内の露出をもっと増やすこと、リーグ全体の価値を上げること。AFCチャンピオンズリーグ(アジアチャンピオンズリーグなんてものは存在しないので注意)で勝ち抜くこと。そうすることで観たい人が増えるし、放映権は価値が上がっていく。
それこそダイジェストでもいいから試合を流す為にテレ東あたりの土日の23時台の枠をJリーグが買い取って番組を作ればいい。FOOTxBRAINの前座的な感じでカジュアルに放送できたら少しは露出が増えるんじゃないかな。MC陣はドンドコ平畠氏、アシスタントにセントフォース枠で高野萌、石山愛子あたりを据えて賑やかしにパンサーなどを配置。MCが弱いとか言うなや。めっちゃいい人なんだぞ!
日本のスタジアム問題
直接的に関係あるか解らないが、スタジアムの問題。サッカー専用スタジアムが少ないというのも少しは関係していると思う。栃木を例にすると、栃木県グリーンスタジアムという球技専用スタジアムがある。サッカー専用に近い臨場感が楽しめるが、今後新設されるスタジアムはなぜか陸上競技場併設。未だ陸連の力の方が大きく、力の弱いクラブは例えサッカー専用スタジアムをと希望しても叶わないことになるのだ。
サッカー専用スタジアムで観戦したことのないサポーターはアウェイでもとにかく観て欲しい。そしてそれを持ち帰って、こういうスタジアムが欲しいんだ!っていう声を少しでも大きくして欲しい。サッカーの声を強くすることもビッグクラブを作る為に必要な要素だと思う。
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「ビッグクラブ」をつくるのは誰だ
こうしてみてみるとビッグクラブというのは突然現れるものではないことがわかる。そしてひとりや一企業で作れるものでもない。サポーターやホームタウンの人々や企業、それらががっちりと肩を組んでクラブを支え愛し続けることでできあがっていく。
100年以上歴史のあるクラブにまだ20年とちょっとしか経っていないクラブがいきなり追い付けるわけがなくて。だからお子さんやお孫さんがいる方は是非一緒にスタジアムにいって欲しい。その子や孫たちが大人になって、また子供や孫を連れて行く。そうしているうちにきっとでき上がるんだと思う。その為にも鼓舞し続け共に戦ってクラブのカラーをより濃くしていく必要がある。
待望のビッグクラブを作り上げるのはきっと「私たちの力」なんです。
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